買いたいマンションに借入を発見!購入は見送るべき?

国交省の調査から、大規模修繕工事の工事費調達の際に、
公的金融機関から借入したマンション:5.4%
民間金融機関から借入したマンション:4.7%
という結果が出ています(※1)。
マンション全体で見ると、約1割が借入を行っている(※2)といえそうですね。
また、マンション全体の約7割が大規模修繕時の工事費を100%修繕積立金でまかなっている(※1)という結果もあります。
多くのマンションで計画的な積立ができているため、借入があるマンションは少数派といえますが、購入希望のマンションに借入がある可能性もゼロではありません。
今回は、買いたいマンションに借入を発見してしまった際の考え方、チェックポイントをご紹介します!
※1:国土交通省「平成30年度マンション総合調査」より。
※2:調査結果が重複回答可となっているため、公的・民間双方から借入をしているマンションが混じっている可能性があります。
「借入発見=即・購入見送り」はちょっと待って!
借入をしているマンションや管理組合にどんなイメージをもちますか?
「計画性がない証拠。永く住むには不安…」
「自転車操業でカツカツってことでしょ?ちゃんと管理されてるの?」
など、よくないイメージが浮かんできますよね。
とはいえ、「借入=悪!」と決めつけるのはちょっと早いかもしれません。
借入があるマンションに出会った時、不動産のプロは次のように考えて「本当に買ってもいいマンションか」を見極めます。
①「何もしない」が一番悪い
「マンションは管理が命」という言葉があるほど、日々のメンテナンスや定期的な修繕工事といった管理が欠かせません。
資産価値を保ち、いつまでも快適に住み続けるために必要な条件は、物件の新しさではなく“適切な管理”です。
その視点で考えれば、借入がある物件よりも「赤字になるから何もしない」という物件の方が問題です。
また、借入するかどうかは、管理会社はもちろん、理事会だけで決められません。
総会で提案し、必ず一定数以上の所有者の承認を得なければならない決まりになっているからです。
話し合いのうえ「多少借入をしても修繕を優先しよう」と判断できる管理組合の方が、何もしない選択をする管理組合より危機管理意識が高く、安心できるのではないでしょうか。
②借入できる=資産性がある
「中古のうえに借入があるマンションなんて、万が一手放すことになったら売れるの?」とリセール時が心配になるかもしれません。
今ご自身が思っているように未来の購入者も同じことを考える可能性は十分あります。
しかし、築年数が経っていても借入できる=「担保価値があり、銀行が融資できるマンションだと判断した」という評価が付いたことも事実です。
また、借入があっても返済と修繕の計画をしっかりと立て実行できれば、十分にマンションの価値を上げることができます。
計画性が伴っていれば「借入=悪!」とはいえません。
それでも心配な方は、過去の売買履歴を調べてみてもいいかもしれませんね。
リセールバリューのあるマンションは、借入の有無に関係なく売買取引が行われています。
借入がある物件はここを見て!
気に入ったマンションに借入があった場合は、下記の4点を確認してください。
①借入の理由は何か
②返済計画は立てられているか
③計画通りに返済できているか
④返済とは別に次の大規模修繕工事に向けた積立ができているか
この4点を確認し、管理組合の方針や運営方法に納得できるようであれば、購入に踏み切ってもいいのではないでしょうか。
チェックする際は、とくに4点目の項目が重要です。
大規模修繕工事は12~15年周期を目安に実施するもので、定期的にまとまった額のお金が必要になります。
返済で手一杯になり、次の工事費が全く準備できていないとなると、次回の大規模修繕で十分な工事ができない可能性があります。
また、貯金ができていない分、積立金の値上げが行われる可能性もかなり高いです。
月々のランニングコスト(管理費・積立金+住宅ローンの月々の返済額)が少しでも増えたら払っていけないという場合は、どんなに気に入ったマンションでもご縁がなかったと見送る勇気も必要かもしれません。
<ちなみに…>マンションの借入っていくらくらい?
国土交通省が実施した2つの調査結果から、架空のAマンションの借入額を推算してみました。
Aマンションは総戸数90戸(※1)の中規模マンションで、1回目の大規模修繕工事を迎えます。
1戸あたりの工事費を110万円(※2)、大規模修繕工事における借入額の割合を40%(※3)と仮定すると、
・大規模修繕工事費:約9,900万円
・Aマンションの借入額:約3,960万円
・1戸あたりの負担:約44万円
と求められます。
上記の計算はあくまでお遊びの領域ですが、具体的な数字を出すことで「借入」という漠然とした不安が「これなら大丈夫かも!」という安心に変わる場合もあります。
数字を見ないことには「買う・買わない」の判断もできないので、気に入ったマンションはぜひ納得がいくまで調べてみてくださいね!
【推算で用いた値】 国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」・「平成30年度マンション総合調査」より、下記の値を使用しました。 ※1:「平成30年度マンション総合調査」より、“大規模な計画修繕を実施した組合”の総戸数規模から1棟あたりの平均戸数を計算し使用。 ※2:「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」より、大規模修繕工事(1回目)の戸あたり工事金額の中央値を使用。 ※3:「平成30年度マンション総合調査」より、“大規模な計画修繕工事実施時の工事費調達割合(民間金融機関からの借入金)”の最頻値(21~40%)を使用。 |
【まとめ】「買わない!」の前によく見極めて
誰しも借入があるマンションには不安を感じるものですが、よく調べないで買わない判断をするのはもったいないかもしれません。
マンションで大事なことは管理であり、適切な修繕ができるのであれば「借入=悪」とはいい切れないからです。
さらに、販売中の物件は何万件もありますが、同じ条件を満たす物件に再び出会うことは至難の業です。
「あの物件、買えばよかったなぁ…」という後悔は意外と後を引くので、借入がネックになっている場合はぜひ納得のいくまで調べてみてくださいね!
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