長期修繕計画案って大事なものなの?

【基本】長期修繕計画って何?
長期修繕計画とは、建物メンテナンスの長期計画書案です。
業界では、略して「長計(ちょうけい)」と呼ぶこともあります。
25~30年以上の単位で「〇年目に××の工事を行う」など、いつどこをメンテナンスするかが計画されています。
いつどんな修繕工事を行い、修繕積立金をいつまでに、いくら貯めるべきなのか目途を立てるためのツール。
ライフプランを設計する上で、FPさんがキャッシュフロー表をつくってくれますが、それのマンション版と思えばわかりやすいかもしれません。
今回は長期修繕計画にまつわる疑問に、Q&A形式でお答えします!
下記の目次から気になる質問へGo!
Q1:長期修繕計画、どうつき合うのが正解?
実際の長期修繕計画をご覧になったことはありますか?
下記は国土交通省が作成した、長期修繕計画の見本(※)です。
※国土交通省「長期修繕計画標準様式の記載例」より
初見の感想としてよくあるのが、
「難しくて、よくわからん!これを見てどうすればいいの?」
ではないでしょうか。
大事なものということはわかるけど、計画を見てもどう考えたらいいのか難しいですよね。
長期修繕計画が真の価値を発揮するには、
- 専門の調査士が建物の現状をチェックし、その物件に最適な計画を作成
- 定期的にチェック・計画の立て直しを実施しアップデートする
この2点を守る必要があります。
「そんなのやって当然じゃん!」とツッコミが入りそうですが、何十年も継続していくにはコストと手間がかかります。
現実的な視点で見ると、築年数や規模・施工方法などのデータを入力して作成した簡易的な長期修繕計画の場合もよく見受けられます。
長期修繕計画はあくまで理想のプランであり、必ずしも計画通りに進めないといけないものではありません。
物件の価値を維持し、快適に住み続けるために大切なことは、長期修繕計画がどうかではなく、これまでにどんな修繕を行い、現在どのように管理しているかです。
長期修繕計画については、「次のQ2でご紹介するチェック項目だけ確認しておく」くらいのつき合い方がオススメです。
Q2:長期修繕計画、どこを見たらいいの?
パッと見、とてもわかりにくい長期修繕計画ですが、この2点だけは確認しておきましょう!
①何年先まで計画されているか
長期修繕計画があっても、「残りの期間があと3年!」というような状態では計画の意味が薄いですよね。
国土交通省のガイドライン(※)によると、長期修繕計画の計画期間は30年以上(うち2回の大規模修繕工事を含む)とされています。
どのくらいの頻度で作成するかは管理組合によるため、目安にはなりますが、現時点から30年先の計画があるかを確認してください。
とはいえ、国土交通省のガイドラインは改訂されたばかりです。
改訂前は計画期間25年以上と設定されていたため、30年以下で作成している物件も多数あります。
残りの期間が30年以下の場合は、念のため
・最新の長期修繕計画なのか(現在作成中などで、最新版になっていないことがあります)
・次の作成予定はあるのか、いつ頃つくるのか
を問い合わせてみましょう。
※国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」より
②次の大規模修繕工事はいつ頃の予定か
大規模修繕工事の前後は、修繕積立金の値上げが行われる可能性が高くなります。
いつ実施されるか目安がわかれば、事前に心がまえができますよね。
また、値上げが決定事項であれば重要事項調査報告書に記載されますが、検討段階では記載されないケースもあります。
購入後、すぐに大規模修繕工事の予定があれば、
・検討レベルでも値上げの話題が出ていないか
・総会で話し合いが行われていないか(総会直後の場合、内容が反映されていないことがあります)
を確認しておくと安心です。
そもそも重要事項調査報告書が100%、物件の情報を網羅しているとはいい切れません。
値上げの有無に限らず、心配な点は不動産会社の担当者へご確認くださいね。
Q3:長期修繕計画、赤字がデフォルトってほんと?
赤字がデフォルトなんてきくと「それって大丈夫?」と不安になりますが、赤字の長期修繕計画はめずらしくありません。
先にお話した通り、長期修繕計画はあくまで理想の計画案です。
「できたらいいな」を100%つめ込んでいるので、どうしても予算オーバーになってしまいます。
赤字になる理由を具体的にお話しすると、
・「一般的に築〇年の段階で××の工事が必要」といったガイドラインをもとに計画している
・建物の状態を見ずに、一般的に必要と思われる工事をすべて計画に入れている
・実際に工事になった際、トラブルにならないよう多めの金額で工事費を見積もっている
といった作成上の都合によるものが多いです。
問題なのは、計画が赤字ではなく、実際の運営が赤字なのに何も対策していない場合。
長期修繕計画が赤字だからといって、過度に不安を感じる必要はありません。
Q4:長期修繕計画じゃなくて、リアルに赤字物件!どう考えるべき?
実際の運営に赤字が出ているとなると「購入は見送った方がいいのかな…?」と不安になりますよね。
購入希望度の高くない物件であれば見送ってOKですが、ほかの条件が気に入っているのであれば
・赤字になった理由は何か
・赤字に対して管理組合はどう対策するつもりなのか
を問い合わせてみましょう。
管理組合からの返答が、
「耐震補強工事を実施したために、赤字が出てしまった」
「負担を増やさないように積立金の値上げをせず、次回の大規模修繕工事では借入も上手に活用して運営していく予定」
など、理由や対策が納得できるものであるか確認してください。
東京都内だけでも約24,000件(※)のマンションがありますが、エリア・立地・広さ・間取りなど、希望が叶う物件にはなかなか出会えないものです。
「買う」「買わない」どちらの判断をするにしても、納得するまで調べることをオススメします。
※(公財)東日本不動産流通機構「2022年12月度マーケットウォッチ」より
【まとめ】見るべきは修繕履歴と今の管理状況!
もちろん長期修繕計画もマンション管理において重要なアイテムですが、あくまで計画であり、理想の案にすぎません。
購入検討の段階では、ぜひ過去の運営状況(定期的に修繕を行ってきたか)に注目してみてください。
過去の管理状況を見ることで、「しっかりと管理されてきたマンションだから、これからも大丈夫だろう」と未来の管理体制にも見通しを持つことができます。
未来予測ができる点が、中古マンション購入の大きなメリットです。
長期修繕計画や修繕履歴などの物件資料を上手に活用しつつ、安心して住み続けられるマンションを見つけてくださいね!
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